蝸牛記 |
by moriko1012
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先ほど無事初日の幕がおりました。
全く事前調べをせずにみましたが、こんなに重いとは…。届かなかった手紙という邦題とはかなり異なる趣をもった作品でした。 アメリカ系ユダヤ人のマックス(今さん)とドイツ人マルティン(高野さん)はベルリン大学でともに学んだ親友。サンフランシスコで画廊を共同経営していた。マルティンがドイツに帰国し、二人の往復書簡が始まるところから、舞台が始まります。 セットは上手と下手にそれぞれテーブル、いすなどかおかれ、上手がマックス、下手がマルティンの部屋という設定。上手側に白い木があって、それがどんどん枝が倒れていくのが象徴的でした。 最初は友情を確認しあうだけの手紙が、ナチス・ドイツの台頭とともに変化していくのですが、マルティンは、ドイツが立ち直る光としてヒトラーをとらえ、マックスとは距離を置いていきます。 マックスはなんとかマルティンとの関係を保とうと呼びかけますが、マルティンには届かない。 そして二人の決裂を決定的にしたのはマックスの妹グリゼレ(麻乃さん)の死。 ここで、私は「届かなかった手紙」というタイトルの本当のところを知りました。原題のaddress unknown つまり転居先不明―すなわち死。マルティンはナチスから逃れてきたグリゼレを見殺しにしたのです。その様子を知らせる手紙に絶望し、咆哮するマックス。 そんな彼がとった行動は・・・、いつもマックスがしたこと。つまり手紙を送ること。しかしその内容はマルティンにスパイ容疑がかかるような暗号めいた思わせぶりなものでした。 マックスの意図どおりマルティンは取調べを受け、公職を追放され、家族も追い詰められていきます。マルティンは手紙でマックスに「手紙をやめてくれ!」と懇願します。 しかし、マックスはかつてのように、笑顔さえ浮かべながら(今さんの顔にはすごい狂気がやどっていてぞくっとしました)手紙を書き続けます。 そしてある日、マックスの書いた手紙がaddress unknown 転居先不明として戻ってきます。それは、マルティンの死を意味するものでした。 マックスの行動の是非をとえば、私は「非」と考えます。ただこれに「是」を見出すことも場合によってはできるわけで・・・。わたしたちは常に何かを「選択」し続けて生きているのですが、誰もが「マルティン」にも「マックス」にもなりえる。一本のペンが持ちえる恐ろしさを体感した作品でした。それでも人はペンをとり続けていくでしょう。でもそれは「届かない手紙」を書くためでは決してないことを信じてやみません。(でもそうなる可能性を持っていることを知っておかねばならないのでしょう) 初めて行ったベニサン・ピット。今月閉鎖されてしまうそうです。小さな空間での濃密な100分でした。
by moriko1012
| 2009-01-12 23:15
| 今拓哉
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